普段何気なく使っているエスカレーター。
実は関東と関西で、乗り方に違いがあるのです。
その違いとともに、エスカレーター本来の乗り方も心得ておきましょう。
関東と関西、エスカレーターの乗り方の違いはズバリ…!
Which(どちらが)
関西では
Why(なぜ)
かつての駅内アナウンスをキッカケに
How(どのように)
右側に立ち左側を空けて
エスカレーターに乗るのが主流です。
Which(どちらが)
関東など関西以外の地域では
How(どのように)
左側に立ち右側を空けて
エスカレーターに乗るエリアが多くなっています。
関東を含め全国的に左側立ちが多く、関西圏は右側立ちが主流
関東では左側に立って右側を空ける、関西では右側に立ち左側を空けてエスカレーターに乗るのが慣例です。
ただし、九州など関西地方以外は全国的に左立ちが普及しているほか、片側を空けずランダムに乗るというエリアも。
右立ちが主流なのは、大阪を中心とした一部の関西地域となります。
片側を空ける理由は、歩いて移動する人と使い分けを図るためです。
なぜ東西でエスカレーターの乗り方に違いがあるの?
関東と関西でエスカレーターの乗り方が違う理由には諸説あります。
その中でも有名なのは、車の通行や駅のアナウンスと関連する説です。
・関東式は車の通行と一致?
エスカレーターの立ち位置は、車の通行と一致するという説があります。
世界的にも共通する法則と言われており、日本の場合は関東式と当てはまるのです。
車は左側通行ですから、立ち位置も左になったと考えられます。
・関西式は駅のアナウンスがキッカケ?
大阪を中心に広まった右立ち、その起源は阪急梅田駅内のアナウンスと言われています。
1967年に移転した同駅には長いエスカレーターが設置されました。
エスカレーター利用者に、「歩行者のために左側を空けてください」という旨のアナウンスを流したのだそう。
現在そのようなアナウンスは流れていませんが、これを機に右立ちが広まったと推測されています。
世界のエスカレーター事情
世界的に見ると、関西地方の右立ちを主流とする国が多いようです。
中国やアメリカ、カナダ、ヨーロッパ諸国などでは、左側を空ける立ち方が大多数とされています。
車の通行も圧倒的に右側通行が多く、日本の左側通行は少数派。
やはり車の通行ルールは、エスカレーターの乗り方にも影響するのかもしれません。
エスカレーターで立つのは右か左か…その「境界線」を徹底調査!(全文表示) – Jタウン研究所 – Jタウンネット 東京都(参照2019.6.5)
【関西の議論】大阪のエスカレーター「右立ち」は世界標準だった!? 半世紀前から、東京の「左立ち」は20年遅れ(1/7ページ) – 産経WEST(参照2019.6.5)
覚えておこう!?「世界各国・日本地域毎の”エスカレータの立ち位置・空け位置”」 | 雑学界の権威・平林純の考える科学(参照2019.6.5)
東西の乗り方はNG?本来の正しい乗り方
当然のようにエスカレーターの片側を歩いている人も多いですね。
実はその乗り方は本来の乗り方ではありません。
今一度、エスカレーターの正しい乗り方を確認してみましょう。
エスカレーターは「止まって乗る」のが基本
エスカレーターに乗るときは、立って「止まる」のが基本です。
右立ちや左立ちは、片側を歩いたり走る人がいる前提の乗り方と言えます。
しかし、エスカレーター自体は移動しながら乗る物ではありません。
手すりに掴まった状態で立ち止まっておくのが本来の乗り方なのです。
歩く、走る行為は危険
エスカレーターは、移動しながら乗ることを想定して作られていません。
歩く、走るといった行為により、転倒・転落の危険が増すことも。
足場が動いている分、通常の階段とは勝手が違うでしょう。
自らが転ぶだけでなく、片側で止まっている人にぶつかるリスクもはらんでいます。
乗り方不良の事故が多い
危険な乗り方が原因の事故は、エスカレーターで多い傾向にあります。
歩く、走る行為だけでなく、手すりに掴まらない、ベビーカーなどを無理やり積む、逆走するなども乗り方不良の一種です。
移動時の接触や、荷物を支えきれず倒れて当たってしまうケースも。
事故に繋がるような乗り方は絶対にやめましょう。
一般社団法人 日本エレベーター協会|エスカレーターのご利用について(参照2019.6.5)
エスカレーターの正しい乗り方(ご利用いただく皆さまへ)|お役立ち情報:安全・安心・快適への取り組み|東芝エレベータ株式会社(参照2019.6.5)
一般社団法人日本エレベーター協会(2015)「エスカレーターにおける利用者災害の調査報告(第8回)」(参照2019.6.5)PDF
今後のルールは?片方開けと両側立ちについて考えよう
関東の左立ち、関西の右立ち。
いずれも根付いた習慣の1つですが、近年は危険性を鑑みて片側を空けない“両側立ち”の普及が呼びかけられています。
今後はどのようにエスカレーターを使えば良いのか、3つのポイントを軸に考えてみましょう。
エスカレーターの輸送効率はどっちが上?
エスカレーターの主な役割は、人の移動や輸送手段です。
片側を空けた場合と両側に立つ場合、移動や輸送の効率はどう変化するのでしょうか。
・両側立ちが輸送効率が上という研究結果有り
ロンドン地下鉄の駅で行われた、エスカレーターの輸送効率実験があります。
片側を空けて止まる人・歩く人がいる場合と、両側に立ち止まって利用した場合、どちらがより多くの人を輸送できるかというものです。
結果的に、より効率良く稼働したのは両側立ちのエスカレーターでした。
片側を歩行するケースより、両側で立ち止まる方が最大30%も多くの人を輸送できたのです。
・ エスカレーターの設置場所により効率が変化する?
鉄道駅におけるエスカレータ上の歩行行動に関する研究では、各駅で異なる歩行割合が流動効率にも影響すると示唆されています。
例えばいつも歩行する人が少ない場所では、片側を空けない方が流動が良い。
逆に歩行割合の高いエスカレーターだと、片側を空けた方が流動効率を下げずに済むと考察されています。
安全が大前提ですが、場所によって使い分けることもポイントと言えそうです。
故障のリスクは?
片側立ちが原因で重大な故障や破損が起こった例を調べてみましたが、国内では今の所そういった報告は見受けられませんでした。
可能性として考えられるのが、歩行時の振動がエスカレーターに悪影響となること。
複数人が同時に歩行することで共振が起き、機械の寿命を縮める恐れがあるのだそう。
すぐさま不具合に繋がる訳ではありませんが、長期的に見ると故障のリスクを高める要因になるのかもしれませんね。
マナーや習慣の面ではどうか?
急ぐ人と止まりたい人、双方が同時に使えるという点では、エスカレーターの片側空けは幅広い方のニーズに応える方式と言えます。
習慣としても根付いており、すぐに変えろと言われても困難でしょう。
・歩道同様に片側を空けるのはマナー?
歩道で横一列に並ぶと迷惑なのは、想像に容易いですね。
歩く速度が違っても、片側を空けていればある程度はスムーズに通行できます。
片側を空けることは、他者に配慮したマナーの一種ともとることができそうです。
ただしエスカレーターは動く装置なので、一般的な歩道と同列に語るのは難しい面もあります。
大竹,岸本(2017)「鉄道駅におけるエスカレータ上の歩行行動に関する研究」(参照2019.6.5)PDF
立ち上がったエスカレーターのみを証明するシミュレーションは、Tube – Telegraphで機能します。(参照2019.6.5)
全文表示 | 「エスカレーター歩行」が予期せぬ故障の原因 名古屋地下鉄では10年前から「歩行禁止」呼びかけている : J-CASTニュース(参照2019.6.5)
東西で左右を空けて立つ乗り方が主流だが、本来は止まって乗るもの
エスカレーターの乗り方は関西で右立ち、関東やその他のエリアで左立ちの慣習が一般化しています。
しかし、近年はエスカレーターでの歩行は危険との見解が周知され始めました。
基本は「手すりに掴まり立ち止まって乗る」ことを前提とした乗り物であることを再認識する必要があるでしょう。
出典
エスカレーター、関西なぜ「右立ち」(謎解きクルーズ) :日本経済新聞(参照2019.6.5)
エスカレーター「片側空け」の歴史と国際比較 | 丸川知雄 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト(参照2019.6.5)
右か左か エスカレーター片側空け、どうして?|くらし&ハウス|NIKKEI STYLE(参照2019.6.5)