長く揺れる髪が美しい「ロングヘア」、アレンジも効く人気の髪型です。
一般的に、男性よりも女性にロングヘアが多い傾向にあります。
なぜ女性は髪を伸ばし、男性は短髪が多いのか、その理由を探ってみました。
ロングヘアに女性が多い理由はズバリ…!
Where(どこで)
日本では
When(いつ)
明治時代に
Why(なぜ)
近代化を進めるために
What(何が)
散髪脱刀令が出され
How(どのように)
男性の短髪化が進められたことが
女性にロングヘアが残る理由になったと考えられます。
日本では「散髪脱刀令」を機に男性の短髪化が進んだ?
ロングヘアが女性の髪型として定着したのは、「散髪脱刀令」が1つの転機だと推測されます。
文明開化の影響を受け、明治時代に発布された政令で、男性を対象に散髪と脱刀を推進するものでした。
さらに男は戦争や外での仕事、女は家事や育児に従事する。
これら当時の社会的役割も、動きやすい短髪が男性に浸透した理由ではないでしょうか。
昔は男女共に長髪が普通だった
太古より、日本では男女ともに髪を伸ばす習慣が根付いていました。
古墳時代の男性といえば、“美豆良(みずら)”が有名。
顔の両サイドで伸びた髪を結ぶ、特徴的なスタイルです。
女性も長髪が多く、そのまま垂らす“垂髪(すいはつ)”のほか、頭頂部付近で結う髪型などがありました。
・ 冠や帽子をかぶるための髪結い
大陸文化が移入すると、男性は冠をかぶるために髻(もとどり)を結うように。
さらに平安時代には、日本独自のスタイルが根付きます。
女性のトレンドは、長い黒髪を伸ばした垂髪へ。
男性は元服としての髪結いも行われ、帽子や冠で覆われてはいるものの、長髪の時代が続きました。
・戦国時代〜江戸時代も基本はロングヘア
戦乱の世に突入すると、男性は兜を装着するために頭を“月代(さかやき)”にします。
頭頂部だけ毛がない、いわゆる落武者スタイルです。
兜で頭がのぼせないようにと、こうした髪型が生まれました。
当時は抜いて脱毛していたため、相当な痛みを伴ったそう。
織田信長の頃から剃髪が普及し、頭頂部を剃りあげて月代に、残った長髪を束ねて髷(まげ)を結うようになりました。
戦の落ち着く江戸時代にも、男性の髪型としての基本は月代に髷。
その形は流行で様々に変化しますが、剃髪した部分以外を伸ばして髷を結うスタイルは継続していきます。
明治時代の散髪脱刀令で男性に短髪が普及?
西洋文化の流入が加速する明治時代。
髪型にもその影響があらわれ、「散髪脱刀令」として国民に通達されます。
外向人から不評であった、髷と帯刀を排除するためのものです。
「散切り頭を叩いてみれば、文明開化の音がする」。
こうした歌とともに、男性の短髪化が進んでいきました。
一方では反発する人々もいましたが、半ば強制的に政策は推し進められます。
散髪脱刀令は、あくまで自由意志で決めてよしとする内容でしたが、実際それは便宜上だったのです。
・逆に女性は髪を切ることを禁じられた
散髪脱刀令を機に、女性の中にも髪を切る人たちがあらわれます。
しかし、当時は“女性が髪を切るとは言語道断”という風潮があったのです。
女性の短髪を阻止するために、「女子断髪禁止令」が出されたほど。
諸事情で女性が髪を切るためには、届け出が必要だった時期もありました。
男性は髷を切り落とす一方、女性は短髪を禁じられた。
こうした流れも、女性を中心にロングヘアが根付いた一因でしょう。
あの日の公文書 | 国立公文書館ニュース Vol.13(参照2021.2.10)
散髪脱刀令とは – コトバンク(参照2021.2.10)
鈴木昌子(1993)「江戸時代の髪型-髪型の変遷にみられる日本人の美意識-」PDF(参照2021.2.10)
明治の断髪令でも生き延びた力士の髷。力士や舞妓さんはなぜ今でも髷を結っているのか? | 歴史・文化 – Japaaan(参照2021.2.10)
下家由起子(2006)「現代に生きるマゲ」PDF(参照2021.2.10)
平松隆円(2012)「<研究ノート>黒髪の変遷史への覚書き」PDF(参照2021.2.10)
その他の説は?
日本では、散髪脱刀令をキッカケに男性は短髪、女性は長髪が維持されていったと考察できます。
これ以外にも考えられる説があるので、順に解説しましょう。
・「アクア説」に基づく生活の名残
人類の祖先は半水生活をおくっていたのでないか、という考えを元にした「アクア説」があります。
アクア説によれば、長髪は水中で子供に掴ませるためのもので、育児に従事していた女性にとって大事なものだった。
女性にロングヘアが多いのはその名残である、という考察です。
・社会的な役割が髪型も分けた
性別で役割をくくるのが当たり前だった時代は、外での労働や徴兵が男性の仕事です。
女性は家事や育児、工場での製造作業などが主な役目でした。
活動性を求められる男性にとって長髪は邪魔となり、短髪化が促進。
女性は激しい運動が少ない以外に、男性に選ばれる立場だったゆえ、美しくあらねばならなかった。
前時代的価値観が、女性にロングヘアを残したとも判断できます。
海外でも昔はロングヘアが主流?時代とともに短髪へ
海外でも、昔は男女ともに長髪の傾向が見てとれます。
欧州では貴族の間で男性のかつらが流行するほど、豊かな毛髪は富や権力の象徴だったのでしょう。
やがて近代化の流れとともに、社会情勢は第一次・第二次世界大戦へ。
こうした時代に合わせてロングヘアのかつらは廃れ、男性の短髪化を進めていったのではないかと考えられます。
現代のヘアスタイル事情
1990年代に訪れた男性のロン毛ブームを始め、時とともに自由に髪型を選べるようになりました。
性別を問わず多様化が促されてはいますが、基本はTPOに合わせて髪型を変える人が多いでしょう。
仕事によっては長すぎる髪、派手な染色をNGとするケースも珍しくありません。
また、背中や腰あたりまでの長髪となると、やはり女性の方が主流です。
単純にイメージの問題以外に、女性の方が髪が伸びる期間が長い傾向にあるという、生体的要因も理由かもしれませんね。
中野毅(2011)「人類進化と文化の形成-現代人間学考2-」PDF(参照2021.2.10)
江戸時代の髪型と現代の盛り髪の共通点とは?『黒髪と美女の日本史』 | ダ・ヴィンチニュース(参照2021.2.10)
女性が髪の毛を伸ばす理由とは? – ライブドアニュース(参照2021.2.10)
かつらの歴史 第2回 中世~17世紀のかつら・ウィッグ世界史|カミわざ(参照2021.2.10)
爪と髪の伸びる速度とは?男女差や子供との違いはあるのか? | 身嗜み | オリーブオイルをひとまわし(参照2021.2.10)
髪を綺麗に伸ばしたい!ロングヘアを美しく維持する秘訣
人気のあるロングヘアですが、お手入れが難しそう……という印象も。
美髪を維持する基本を紹介するので、日々のヘアケアに役立ててください。
髪の健康、基本は洗い方にあり
髪を健やかに保つには、正しいシャンプーが欠かせません。
まずは、しっかりとシャワーで頭・髪全体を濡らし、予洗いすること。
これだけである程度の汚れが落ちます。
次にシャンプーを適量手に取り、手のひらで軽く泡立ててから頭へ塗布しましょう。
指の腹を使って、頭皮をマッサージするよう洗います。
爪を立てたり、髪の毛を強くこするのはNG。
最後にシャワーで洗い流しますが、シャンプー剤が残らないよう丁寧に、じっくりとすすいでください。
前提として、自分に合ったシャンプーを使うことも重要です。
髪の乾かし方にもポイントが
濡れた髪はいたみやすいため、放置せず早めに乾かすのが吉。
洗い上がり直後の髪は、優しくタオルドライして水気をとります。
決して激しく擦ったり、ゴシゴシと拭かないこと。
根元には優しく押し当てるように、毛先は挟み込むなどして、摩擦がおきない方法で拭いてください。
タオルである程度水分がとれたら、ドライヤーへ。
乾きにくい根元から順に風を当てて、乾かしていきましょう。
全体が乾いてきたら、最後に冷風を当てて熱をとることで、余計な水分の蒸発を防げます。
食事やUVのケアで髪を元気に
お肌同様、髪も紫外線によるダメージは無視できません。
日差しの強い日は、日傘や髪用のUVカットスプレーなどで対策を。
紫外線に負けない強い髪を育てるには、十分な栄養が不可欠です。
髪の毛の材料になるタンパク質と、その合成に欠かせない亜鉛。
抗酸化作用の豊富なビタミンCやβ-カロチンは、髪の老化を進める活性酸素の除去に役立ちます。
それぞれの栄養は互いに助け合って働くため、どれか1つを極端に摂るのではなく、バランス良く摂取することが大切ですよ。
【今日から出来る】キレイなロングヘアを保つ5つの方法 | クレイツ CREATE ION(参照2021.2.10)
美容師が徹底解説!絶対に美髪になる7つのヘアケア方法と知っておきたい髪の真実【2021年版】|トリートメント(参照2021.2.10)
キレイな髪になりたい!それなら知っておきたい「ヘアケア」の基本 | 美容の情報 | ワタシプラス/資生堂(参照2021.2.10)
【医師に聞く】健康的な髪に必要な「栄養」は、コレ! | 美的.com(参照2021.2.10)
ヘアケアの基本と手順 | ロレアル パリ L’ORÉAL PARIS(参照2021.2.10)
ロングヘア=女性のイメージは「散髪脱刀令」から広まったと推測される
男性に比べ女性にロングヘアが多いのは、日本においては「散髪脱刀令」が理由の1つだと推測されます。
さらに男性は労働、女性は家事育児という、当時の社会的な役割も影響しているでしょう。
近代化促進とともに、動きやすさを求める男性は短髪化。
反面、女性は短髪を禁じられた時代もあるなど、長い髪を要求される傾向がありました。
個人の自由や多様化が尊重される昨今は、TPOに合わせた髪型選びが一般的に。
ロングヘアはもちろん、美しい髪をキープするには、日頃のヘアケアが重要なことを覚えておきましょう。
出典
三澤,純(2002)「散髪令考」PDF(参照2021.2.10)
歴史・時代ものを書く人必見! 日本人の髪型&髷の歴史 – パンタポルタ(参照2021.2.10)