和の伝統芸能を代表する『落語』。
落語には「江戸落語」と「上方落語」がありますが、その違いをご存知ですか?
日本人なら知っておきたい、江戸落語と上方落語の違いを解説します。
江戸落語と上方落語の違いはズバリ…!
Which(どちらが)
江戸落語は
Where(どこで)
江戸で生まれた落語で
How(どのような)
武士文化の影響を受けた人情噺が
特徴の落語です。
Which(どちらが)
上方落語は
Where(どこで)
京都や大阪で生まれた落語で
How(どのような)
商人文化の影響を受けた愉快な噺と派手な演出が
特徴の落語です。
武士文化の江戸で発展した「江戸落語」、商人文化の大阪で育った「上方落語」
江戸落語と上方落語の違いは、発祥や噺の特徴などにあります。
徳川幕府の拠点で生まれた江戸落語は、武士文化の中で発展した人情味のある噺が特徴。
一方、大阪や京都で生まれ、関西を中心に広まったのが上方落語です。
特に大阪は商人の街として知られる地域で、お金にまつわる噺や、音の出る派手な演出が好まれました。
落語のルーツは『御伽衆』だった?
落語のルーツとなったのが、戦国時代からいたとされる「御伽衆(おとぎしゅう)」です。
将軍や大名など上位の者に侍して、説教や講釈話をする人を言います。
豊臣秀吉の御伽衆だったのが、僧でもある「安楽庵策伝(あんらくあんさくでん)」。
彼が書いた“醒睡笑”は、策伝の持つ数々の笑いネタを集めた本です。
本の中の話には、今でいう“落ち”が付けられていたとか。
当時の滑稽な話が凝縮されたこの読み物は、落語の原点として知られています。
江戸落語とは?江戸落語の歴史
「江戸落語」とは、その名の通り江戸で広まった落語を指します。
江戸落語の祖と言われるのが、「鹿野武左衛門」です。
彼は招かれた座敷で面白い話をするという芸を始め、それでお金を稼いでいました。
このスタイルが江戸を中心に広まり、江戸落語として発展。
江戸落語を象徴する存在として、「三遊亭」や「柳家」などの著名な一門が挙げられます。
上方落語とは?上方落語の歴史
大阪や京都が発祥と言われる「上方落語」。
米沢彦八や五郎兵衛らが、神社の境内などで噺を披露していたのが元祖とされます。
特に大阪を中心に発展した上方落語、大通りなどの屋外で行うのが主流でした。
時には“ハメモノ”と呼ばれる楽器を使うなど、賑やかな演出で道行く人を湧かせていたのです。
上方で初めて寄席を作ったのは、初代「桂文治」。
「笑福亭」や「林家」など、有名な落語家も誕生しました。
江戸落語と上方落語の違い
発祥の違う江戸落語と上方落語には、その中身にも様々な個性が見られます。
どんな部分が異なるのか、ポイントを解説しましょう。
・噺の傾向の違い
武士文化の中で発展した江戸落語は、人情を感じる噺が多かったとされます。
元々お座敷向けの少人数を相手にしていた落語なので、淡々と聞かせるスタイルがメイン。
一方の上方落語は、商人が多く行き交う屋外で披露していたため、気を引くような工夫が必要でした。
音を出す派手な演出が見られるのは、当時の事情の名残なのです。
また、江戸落語よりも“笑い”を重視する傾向にある上方落語。
華やかな演出による陽気な落語が多いのは、上方の笑いを愛する文化に由来するものでしょう。
・小道具や演出の違い
落語の演出に使う小道具にも、両者で違いが見られます。
江戸落語で用いるのは、扇子と手ぬぐいの2つのみ。
これらを巧みに使い、キセルやお箸、本など色々な物を表現するのです。
上方落語は、噺家の前に置く「見台」、見台を鳴らすのに使う「小拍子」、見台の前に置いて足元を隠す「膝隠」が代表的な小道具。
見台を鳴らすのは、上述の通り人を呼び込むために用いられてきたものです。
・階級制度の違い
江戸落語には階級制度が存在し、入門時には「前座見習い」からスタートします。
そこから「前座」、「二ツ目」と上がり、更に「真打ち」になると、弟子を取れるように。
江戸落語家として歩み始めた人は、誰しも「真打ち」を目指すことになるでしょう。
対して上方落語には、階級制度が存在しません。
かつてはありましたが、時代とともに弱体化していきました。
ただし、年功序列や実力に応じてトリを務めることができるなど、独自の体制は存在するようです。
「江戸落語」と「上方落語」、「古典落語」と「新作落語」 – OZmall(参照2020.11.18)
【落語】粋な江戸落語!華やかな上方落語!違いや魅力をご紹介(参照2020.11.18)
落語の祖 策伝上人/浄土宗西山深草派 総本山 誓願寺(参照2020.11.18)
落語の祖 安楽庵策伝 | 岐阜県図書館(参照2020.11.18)
落語の起源は戦国時代の御伽衆~元祖は江戸時代の安楽庵策伝だった – BUSHOO!JAPAN(武将ジャパン)(参照2020.11.18)
落語の歴史:落語家のはじまり|大衆芸能編・寄席|文化デジタルライブラリー(参照2020.11.18)
落語|日本文化いろは事典(参照2020.11.18)
落語ってなに? – 落語はじめの一歩|落語芸術協会(参照2020.11.18)
上方落語協会の歴史|公益社団法人 上方落語協会(参照2020.11.18)
落語をもっと楽しむために!知っておきたい豆知識
伝統的な芸能である落語について、さらに深掘りしていきましょう。
実際に聞いてみたい、体験したいという方に役立つ豆知識をご紹介!
どんな噺があるの?有名な落語の一例
落語初心者にとっては、どの噺が面白いかわからないものですね。
まずは有名どころをチョイスして、落語の世界観に触れてみましょう。
聞いておきたい定番の落語を3つ、簡単に紹介します。
・時そば
そば屋で勘定をうまく誤魔化し安く払った男、それを見ていた別の男が真似をしようとするが……。
悪知恵が働いた男に天罰が下る、ユーモラスで痛快な物語「時そば」。
そばや汁をすする音の上手さにも感心する、有名な落語の1つです。
・まんじゅうこわい
怖いもので友人を驚かせようとするけれど、実は友人の企みにまんまと乗ってしまうという落語「まんじゅうこわい」。
非常に古くからある落語でもあります。
落ちでドッと笑えるわかりやすさから、落語を聞き慣れていない人でも楽しめるでしょう。
・寿限無
こちらも有名な落語「寿限無」、古典落語の王道です。
「じゅげむじゅげむ……」から始まる長い名前を繰り返し、早口で語ることで知られていますね。
同じことを繰り返す“天丼”のテクニックが盛り込まれた話と言えそうです。
落語のおすすめ10選!定番ネタからおさえよう!(参照2020.11.18)
こんなに面白いんだ!初心者が最初に聞くべき落語10選 – Digmo(参照2020.11.18)
落語を聞きたい!東西の代表的な寄席がこちら
生で落語を聞ける場所といえば「寄席」です。
落語以外にも、漫才や講談、曲芸など様々なショーが楽しめます。
江戸落語、上方落語をそれぞれ聞いてみたいという方に、東京と大阪にある定番の寄席を紹介しましょう。
・東京:浅草演芸ホール
観光名所としても知られる浅草、そこにあるのが「浅草演芸ホール」です。
立川談志、五代目三遊亭円楽など、多くの著名落語家が若手時代に落語を披露していた場所。
1年365日公演している“落語定席”でもあります。
浅草観光なら寄席(落語)に行こう – 浅草演芸ホール(参照2020.11.18)
・東京:池袋演芸場
池袋にある「池袋演劇場」、1951年創業の歴史ある寄席です。
学生服割引や親子割引のほか、浴衣や着物で訪れるとお得になる面白い割引も。
和装で落語を堪能できる、粋な機会になるでしょう。
池袋演芸場(参照2020.11.18)
・大阪:天満天神繁昌亭
上方落語の伝統を引き継ぐ「天満天神繁昌亭」。
戦争で失われた落語定席を復活させようと、六代目桂文枝を中心に2006年に作られた寄席です。
王道の上方落語を楽しめるのはもちろん、団体向けに上方落語の体験プログラムなども開催しています。
天満天神繁昌亭|上方落語専門の定席(参照2020.11.18)
・大阪:動楽亭
米朝事務所の落語家が活躍する「動楽亭」、動物園前駅のすぐ近くにあります。
米朝事務所には、桂ざこば、桂南光など米朝一門の上方落語家が所属。
本格的な上方落語をじっくり楽しめる寄席の1つでしょう。
動楽亭 – 落語会 | 株式会社米朝事務所(参照2020.11.18)
寄席に行く時のマナーや注意点ってある?
一般的に、寄席に行く際のドレスコードはありません。
敷居の高いイメージもありますが、ラフな服装で問題なし。
時間が空いたから……という感覚で、気軽に立ち寄って大丈夫なのです。
チケットはその場で購入できるほか、会場によっては前売りも行っています。
飲食に関しては、会場ごとのルールを守ってください。
公演スケジュールは、HPでチェックできるケースが多くなっています。
事前に確認しておけば、お目当ての落語家と会える確率が高まるでしょう。
『落語』初心者向け楽しみ方&寄席(よせ)の基本マナー | 働く女性のモチベーション&売上アップの人材教育・社員研修ならシェリロゼ(参照2020.11.18)
寄席を楽しむためのコツと落語が聞ける東京の寄席4選 | 文化放送 記事詳細(参照2020.11.18)
落語はライブにかぎる 初心者向け観賞のススメ|エンタメ!|NIKKEI STYLE(参照2020.11.18)
江戸で発展した人情系の江戸落語、大阪を中心に広まった笑いの上方落語
武士文化の中で発展を遂げた江戸落語。
お座敷芸から始まり、人情味溢れる噺と粋な小道具で人々を楽しませてきました。
京都や大阪で生まれた上方落語は、商人文化の影響による派手な演出、笑いの多い噺で心を和ませてくれます。
寄席でその素晴らしさを体験し、日本の誇る伝統芸能を堪能しましょう。
出典
上方と江戸の笑いには違いがある!豪胆にして繊細、落語家・笑福亭純瓶師匠インタビュー | 和樂web 日本文化の入り口マガジン(参照2020.11.18)
日本の文化のルーツを知る。伝統的な〝笑い〟に惹かれて寄席で楽しむ「落語」 | 受け継ぎ、受け継がれる「想い」と「かたち」 LIFE-BATON ライフバトン(参照2020.11.18)
寄席の芸能|大衆芸能編・寄席|文化デジタルライブラリー(参照2020.11.18)